夫婦愛を描く 委員長のウルトラシネマ 『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』
『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』予告
こんにちは!!
みなさん、AmazonPrimeもいいですけど、劇場で映画を見ませんか?
映画はやっぱり映画館で見るものなのです!!
今回紹介するのは『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』です!!
なんとテーマは夫婦愛です!
目次
クレしん映画の系譜
クレヨンしんちゃんはもはや説明不要だと思いますが、こいつの悪ふざけです(笑)
クレヨンしんちゃんは1992年からテレビ朝日で放送開始し、その独特かつ下品なギャグセンスから毎年のように「子供に見せたくない番組1位」に選ばれています。それでもこのしんちゃんが愛される理由。それはやはり毎年の「クレしん映画」のクオリティによってでしょう。
No | タイトル | 公開日 | 興行収入 |
1 | アクション仮面VSハイグレ魔王 | 1993年 | 22.2億円 |
2 | ブリブリ王国の秘宝 | 1994年 | 20.6億円 |
3 | 雲黒斎の野望 | 1995年 | 14.2億円 |
4 | ヘンダーランドの大冒険 | 1996年 | 12.0億円 |
5 | 暗黒タマタマ大追跡 | 1997年 | 11.3億円 |
6 | 電撃!ブタのヒヅメ大作戦 | 1998年 | 10.6億円 |
7 | 爆発!温泉わくわく大決戦 | 1999年 | 9.4億円 |
8 | 嵐を呼ぶジャングル | 2000年 | 10.7億円 |
9 | 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲 | 2001年 | 14.5億円 |
10 | 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦 | 2002年 | 13.0億円 |
11 | 嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード | 2003年 | 13.5億円 |
12 | 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ | 2004年 | 12.8億円 |
13 | 伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃 | 2005年 | 13.0億円 |
14 | 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ! | 2006年 | 13.8億円 |
15 | 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾! | 2007年 | 15.5億円 |
16 | ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者 | 2008年 | 12.3億円 |
17 | オタケベ!カスカベ野生王国 | 2009年 | 10.0億円 |
18 | 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁 | 2010年 | 12.5億円 |
19 | 嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦 | 2011年 | 12.0億円 |
20 | 嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス | 2012年 | 9.8億円 |
21 | バカうまっ!B級グルメサバイバル!! | 2013年 | 13.0億円 |
22 | ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん | 2014年 | 18.3億円 |
23 | オラの引越し物語 サボテン大襲撃 | 2015年 | 22.9億円 |
24 | 爆睡!ユメミーワールド大突撃 | 2016年 | 21.1億円 |
25 | 襲来!!宇宙人シリリ | 2017年 | 16.2億円 |
26 | 爆盛!カンフーボーイズ〜拉麺大乱〜 | 2018年 | 18.3億円 |
27 | 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜 | 2019年 |
なんと27本もの作品を世に出しています。ポケモンやコナン、ドラえもんといった超人気アニメと並び、毎年公開されます。客を選ぶ「クレしん」ですがので、これは大健闘です。
中でもその地位を決定的にさせたのは9作目「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」です。この作品は、日本のメディア芸術100選アニメ部門に選出されました。宮崎駿作品やエヴァンゲリオンと同じ賞です。これは快挙です。原恵一監督の手腕ですね。この作品に関してはまた今度じっくり語ります。
めっちゃ渋いクレしん映画
クレしんは他の映画にはできないことをしています。それは「ストレートな社会風刺」です。社会風刺をする作品はアニメに限らず、様々な映画で使用されますが、どうしても、好き嫌いがはっきりしてしまいます。理由は2つ。
1つ目は「説教臭さ」です。あまりのもストレートに「争いはいけない」とか「弱い人を救いなさい」的なものを描こうとすると客は引きます。作り手が偉そうに見えるからです。「そんなことわかってるわ」「お前そんなに偉いのか」って客は言いたくなっちゃいます。「正しさ」をわかりやすく提示すると逆差別的な色がどうしても出てしまいますね。そうゆうドラマや映画はいっぱいあります。
2つ目は「小難しさ」です。前述の懸念を避けようとすると、話が難しくなります。社会は複雑なので、そのリアリティに寄せる必要があるからです。そうすれば、様々な視点で描かれ、作品としての奥深さが際立ちます。主人公にわかりやすい「正しさ」を提示しないので、観客はある程度の想像力が問われます。個人的にはそうゆう作品は好きです。しかし、これはこれで好みがはっきりでるので、売れないですね(笑)。まず子供は見ないです。
クレしんはこの2つの壁を高度なテクニックでクリアします。
まず何より、クレしんはハイクオリティなギャグマンガです。どんなテーマを扱っても軽快なギャグで笑いを誘い。ギャグだけで観客を満足させることができます。
このギャグマンガとしての圧倒的な信頼度が社会風刺に貢献します。笑った後にポッと深いテーマが顔を出します。そうすると説教臭さは存在しません。基本的に登場人物はふざけてますし、何よりしんちゃんは5歳児だからです。緩急があるのでストレートな社会風刺が耳に入りやすいです。このバランスを保つことで「説教臭さ」も「小難しさ」も消します。子供は大笑いし、大人はグッとくるのです。
圧倒的なギャグマンガであり、主人公の視点は幼児。こんなのは「クレヨンしんちゃん」しかないのです。
テーマは夫婦愛
では今回の『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』はどうなのか。なんとテーマは「夫婦愛」です。タイトルにもある通り、野原夫婦は初めての新婚旅行に出かけます。おそっ(笑)。しかし、この遅めの新婚旅行が話を際立たせます。今回の主人公はみさえです。
女性としてのみさえが描かれます。みさえは新婚旅行に張り切っている普通の乙女なのです。なので、ひろしとのラブラブ旅行を夢見て出かけます。
しかし、しんちゃんにはそんなことは理解できないので、いつものようにみさえいじりギャグが炸裂します。しんちゃんに悪気はないので、何とも言えない空気が劇場も包まれます。子供は大笑い。母親は身に染みている表情。いいですね。見る立場によってシーンの見え方が変わる。理想的な演出です。
そして、徐々にみさえの期限を悪くなり、ひろしと険悪になっていきます。そんな時にある秘宝めぐり、ひろしが仮面一族に拉致されます。そのひろしを救出するのが今回の基本のお話。
いつもと違うのは作り手は明らかにみさえの頑張りをメインに描いているということです。「家族愛」を描くことが多い、「クレしん映画」ではしんちゃんの奮闘をメインに置くことが多いです。「オトナ帝国」も「アッパレ!戦国大合戦」でもそうですね。そのため、野原夫婦は引き立て役に回るのですが、今回はしんちゃんは引き立て役です。険しい困難の途中、何度もみさえは「なぜ、夫にこだわるのか」という問いを突き付けられます。その問いに対し、みさえはわかりやすい言葉を吐きません。夫だから。それが全てだと言うシンプルな答えに観客のお母さんたちは「グッと」きてるはずです。そして、子供たちは不器用なみさえに笑います。このバランスこそ万人が楽しめる「クレしん映画」の真骨頂ですね。
ラストシーン、ひろし奪還を目の前にして、ラスボスが現れます。そこで流れるBGMとみさえの奮闘に涙ボロボロです。
是非、夫婦で、カップルで見に行って頂きたいです。「夫婦」とはなんなのか。そんな作品です。
それでは、シュワッチ!!